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浮上油回収装置とは、何ができる装置なのでしょうか。導入するメリットやデメリットを含め、浮上油回収装置の基本的な情報をまとめています。
浮上油回収装置とは、水溶性クーラントタンクや工場内の排水槽などに混入する油を回収するシステムです。切削加工機やマシニングセンタといった工作機械を使う際に、潤滑油や作動油といった油がクーラント槽内に混入することがあります。それが腐敗すると、工場の運営や環境に悪い影響を及ぼします。浮上油回収装置がこれらの油を常時回収することにより、環境改善やコスト削減など、さまざまなメリットが享受できます。
切削加工機の油が腐敗してしまうと、腐敗臭が発生します。この腐敗臭の原因は嫌気性細菌の増殖が原因です。タンク液の汚れが嫌気性細菌の養分になってしますので、放置すると様々な問題を引き起こします。例えば、工場内の作業者の健康被害や周辺住民からの苦情があげられます。
また、この腐敗臭は衣服に残るため、作業員の髪などに付着してしまいます。こうした油の腐敗の問題に対して、新しい液に変えること、油分の除去、空気を送り込むことで、対策を実施することが大切です。
浮上油回収装置を使用することで、切削液や洗浄液の腐敗を防止できます。そのため、腐敗液が放つ悪臭から解放されるうえ、従業員への健康被害リスクも抑えることができるでしょう。
また、切削液や洗浄液が浮上油回収装置によってきれいに保たれることで、切削液の機能低下も防げます。切削液の寿命を延ばすのはもちろん、工具の寿命も延長でき、コスト削減につながったという事例も多くあります。
さらに、加工後や洗浄後の加工品の汚染防止や機械の汚染防止といった効果も期待できるため、浮上油回収装置の導入によって得られる効果は大きいといえます。
このほか、浮上油回収装置が槽内(タンク)に混入した油やスラッジなどを回収するため、清掃の手間が軽減します。また、槽内の液体が腐敗するのを抑え液体を長持ちさせることにより、廃棄物量の削減も可能。産業廃棄物処理コストの削減にもつながります。
加えてスラッジや浮上油の回収は、ランニングコストの削減にもつながります。スラッジや浮上油の回収を適切に実施することによって、フィルターの目詰まりを防止できるからです。結果的にフィルターの交換回数を減らし、ランニングコストの抑制につながるでしょう。
さらに、油の腐敗臭や油煙(オイルミスト)も抑えられ、工場内の嫌なニオイも軽減。職場の環境保全や作業員の健康にも貢献します。
浮上油回収装置の価格は、メーカーや機能などによって大きく異なります。安価なものだと10万円弱、高いものでは100万円以上する装置もあります。平均すると、30万円前後の製品が多いようです。
浮上油回収装置(オイルスキマー)は、回収または修復の目的でオイルを収集するため、オイルを水から分離するデバイスのこと。 さまざまな種類のオイルスキマーがあり、親油性材料、ブラシ、ベルト、ロープ、堰など、実にさまざまな技術でオイルを脱脂することができます。
フローティングオイルスキマーは水面に浮いているもので、ラインのある場所に保持したり、船から展開したり、船に牽引したりが可能。これらのスキマーには通常、ドラムスキマー、ブラシスキマー、堰スキマー、および一部のベルトスキマーが含まれます。
固定オイルスキマーは、恒久的な場所に設置されています。これらのスキマーには、一般的に、多くのタイプのベルトまたはロープスキマーが含まれます。それらは通常、製造アプリケーションで使用されるオイルタンクに取り付けられます。
ベルト式は最もポピュラーなタイプの浮上油回収装置(オイルスキマー)。回転するベルトに油を付着させ、油をかき取って分離・回収します。リーズナブルに購入できますが、稼働している内にベルトに汚れが付着して、油が上手く付かなくなったり、ベルトが切れてしまったりすることがあります。
円盤式は、タンク内で回転する円盤に油を付着させ、油を分離・回収する仕組み。ベルト式よりは耐久性に優れていますが、衝撃によって円盤が割れてしまうこともあります。また、設置面積はベルト式よりも大きくなります。
スクリュー式は、らせん構造のスクリューを回転させ、油を持ち上げて分離・回収。回収能力が高いのがメリットですが、切粉やスラッジを巻き込みやすいところが難点。異物の混入が多いタンクで使用する際は、故障につながる危険があります。
フロート式は、フロート(浮き)で回収装置を液面に浮かせて液面に浮上して溜まっている油を回収する仕組み。浮上している油に対しては優れた回収能力を発揮しますが、浮上していない油や、稼働中で流れが速いタンクからは上手く回収できないこともあります。
浮上油回収装置は、基本的にメンテナンスの必要が少ないように設計されています。メンテナンスの例をあげれば、ベルト交換やスキージの調整などで、特別な工具が必要ありません。また、機械の破損や部品交換については、メーカーサポートが対応しています。
自社で導入する浮上油回収装置に必要なスペックは、使用する工作機械や液体の成分、環境など、さまざまな要因によって決まります。これらの要因をあらかじめまとめることが、費用対効果の高い浮上油回収装置を選ぶポイントといえるでしょう。
浮上油の正体や、どのようにして生じるものなのかといった基本的な知識を解説します。また、浮上油を放置すると「悪臭」「油煙(オイルミスト)」「工作機械の作動不良や摩耗」などを引き起こす理由についても説明します。
浮上油回収装置の導入を検討するうえで、具体的な活用事例は大いに参考になります。ここでは、自動車、精密機械、重工業など業界別に導入事例をまとめています。導入したことで、工場の環境や経営にどのような効果があったかも紹介します。
オイルスキマーのなかでも最も一般的なのが、ベルトを使って付着した油を回収するタイプです。スチールやステンレス、特殊樹脂が材質として使用されており、材質によって回収能力が異なります。ベルトで油を回収する仕組みや材質による違いなどをまとめました。
スクリュー式の浮上油回収装置は、スクリューで高粘度の油を巻き取りながら回収する仕組みになっています。分離タンクを設置する必要がないので、設置スペースが限られている現場におすすめの装置です。ただし、切削粉やスラッジを巻き込みやすいという課題も。スクリュー式のメリットやデメリット、課題の解決方法について解説します。
浮上油回収装置が液面の浮上油をフロートやベルトで回収するのに対し、油吸収材はシートなどを使って油を回収します。シートタイプ以外にもマットやチューブ、粒状タイプなどもあり、用途や使用環境に応じた使い分けが可能です。
ただし油吸収材は使い捨てとなるため、産業廃棄物が発生します。また、油回収のスピードで比較すると、浮上油回収装置の方がより速く回収できます。
油分解剤は洗浄剤の働きによって油を細かく分解してくれます。分解された油は微生物によって再分解されるため、油がほとんど残らないのがメリット。また、植物油や動物油、エンジンオイル、切削油などさまざまな油を分解できる点も油分解材のメリットです。
ただし分解完了には時間がかかるため、スピーディに浮上油だけを回収したい場合には浮上油回収装置の使用がおすすめです。
一般家庭や事業場から排出される排水油は、排水処理設備や環境へ大きな影響を与えています。排水処理トラブルや水環境悪化を防ぐためには、排水処理前に油分を除去しておくことが重要。そのため、浮上油回収装置が活用することで効率よく処理が進められます。
悪臭や機械トラブルの原因は、浮上油だけではない可能性もあります。切削加工の現場で多いのが、微細なスラッジ(切削粉など)です。スラッジが現場に与える影響には、どのような事象があるのでしょうか。スラッジのもたらす問題点についてお伝えします。
円盤式の浮上油回収装置では、回転している円盤に付着した油をワイパーで除去する仕組みになっています。設置にはスペースが必要ですが、サイズを選べるため設置箇所に合ったものを導入できます。
また、円盤式には溝付きタイプもあり、多くの浮上油を回収可能。ただし溝にゴミが付着すると目詰まりを起こすこともあります。
フロート式はシンプルなつくりになっており、浮上油回収装置の周りにフロート(浮き)を設置して液面に浮かせています。液面に浮上した油の回収を得意としており、操作も簡単。メンテナンスも容易に行えるため手間を削減したい現場にもおすすめです。
なお、液面変動にも追従できるメリットがありますが、浮上していない油や流れの速いタンク内での油回収は苦手です。
悪臭や機械停止などのお悩みは、浮上油だけが原因ではないことも。
そこで、様々な現場に広く答えてくれる浮上油回収装置の中でも、デモ機レンタルで導入検討ができる製品ラインナップを厳選しました。
浮上油回収に必要な機能を備えた小型仕様。
狭いスペースでも収納が可能